主に女子フィギュアで多くの選手が多用するようになり、フィギュアファンの間で大きな議論を呼んでいるタノジャンプ。
その評価はフィギュアファンの間でも様々で、真っ二つに分かれているのが現状です。
今回はタノジャンプがどのようなものなのか、その由来から多用している選手まで、タノジャンプについて深く掘り下げていきます。
(ライター:myk)
目次(タップでジャンプ)
タノジャンプの意味・由来
基本的にタノジャンプとは、片手または両手を上げて跳ぶジャンプのことを指します。
タノジャンプの”タノ”は、カルガリー五輪チャンピオンのブライアン・ボイタノ選手がルッツジャンプを片手を高く上げて跳んだことに由来していて、ルッツに限らず手を上に上げて跳ぶジャンプ全般をこう呼ぶようになりました。
(ちなみに、アダム・リッポン選手が両手を上げて跳ぶルッツジャンプは、フィギュアファンの間ではリッポン選手にちなんで「リッポンルッツ」と呼ばれています)
フィギュアスケートファンの意見
さて、冒頭にも書いた通り、タノジャンプの多用にはフィギュアファンの間でも大きく意見が分かれています。
どのような意見があるのか、賛成派と反対派それぞれの意見を見てみましょう。
賛成派
・フィギュアスケートのタノジャンプ、めちゃくちゃ綺麗だから好きなんだけどどうしても点数稼ぎみたいに見えちゃうんだね...。
・選手達が必死に離されまいと頑張るために選んだのがタノジャンプなだけで、その努力を否定的な目で見てはいけない。片手だろうが両手だろうが、やらなきゃ点はついてこない。美しさだけが勝る世界で無くなったのは仕方のないことだと思う。私は昔からタノジャンプは好きです。
・タノジャンプをシェーとかdisってる手合いは、本当にブライアン・ボイタノ様に土下座して謝ってほしい(割とガチ切れ)
・タノジャンプいろいろ言われてるなー。でもあんなにバランス取りづらいらしいジャンプをやすやすと跳ぶロシア女子たちの努力たるやすごいものがあると思うよ。
・タノジャンプに異論を唱える人がいるけど個人的にいいと思う。加点を狙ってーとかなんとか言われるけど、そんなに加点されたスコアに見えないし、みんな胸前で締めるだけのポジションじゃなくていいと。腰にやったり、広げて2Tとかシェーでもいいと。
反対派
・何か、ロシア選手の取りあえずタノジャンプしてる感じがちょっと好きじゃない。取りあえずしてるわけでもないんだろうし、加点対象にもなるんだろうけど、、、
・タノジャンプばかりだと、演技が全部それに持っていかれて、印象がタノしかない...
・タノジャンプ、やっぱり腕はまっすぐで指先まで伸びてないと美しいとは思えないな...。
・全部タノられると「曲に合わない」と感じる。局所的に使うから盛り上がると感じるのかも。
・タノジャンプは回数制限してほしい...個人的に...
(意見はtwitterより抜粋)
こうして見ても実にさまざまな意見が散見されますね。
基本的に賛成派は点数を少しでも多く稼ぎにいく選手達の努力を称賛する声や、「綺麗」「多様なジャンプがあっていい」といった声が多く見られました。
一方反対派は、「演技の印象がタノばかりになってしまう」「音楽と合っていない」「腕がまっすぐのびてないと美しくない」といった声が目立ちました。
タノジャンプの難しさ、加点はどのぐらい?
タノジャンプは難しい?
物理学的に、ジャンプの回転中、体の軸から手足を離せば離すほど回転は遅くなり、逆に手足を近づければ回転は早くなるということが証明されています。
つまり、手を体の軸から離すタノジャンプは回転しづらいため、それだけ難しいということになります。
近年では特にジュニアの女子選手にタノを多用する選手が増えていますが、これは体がまだ未発達で線も細いため回転がしやすいという利点からジャンプに余裕ができるので、回転に余裕のある選手は加点要件となるタノを用いていることが多いのではないかと思われます。
タノジャンプの加点について
ジャンプの加点要件は以下の通り。
1.予想外の/独創的な/難しい入り
2.明確ではっきりとしたステップ/フリー・スケーティング動作から直ちにジャンプに入る
3.空中での姿勢変形/ディレイド回転のジャンプ
4.高さおよび距離が充分
5.(四肢を)充分に伸ばした着氷姿勢/独創的な出方
6.入りから出までの流れが充分(ジャンプ・コンビネーション/シークエンスを含む)
7.開始から終了まで無駄な力が全くない
8.音楽構造に要素が合っている
2項目クリアで+1、4項目クリアで+2、6項目以上クリアで+3
タノジャンプはこのうちの3(空中での姿勢変形)に当てはまります。
しかし、加点要件では2項目以上をクリアしなければならないため、ただ手を上げてジャンプを跳ぶだけでは加点されません。
上記の項目を更に満たし、高いジャンプの技術が必要になってくるからこそタノを用いることでより多くの加点を獲得できるということになります。
タノジャンプを多用する選手
エフゲニア・メドベデワ(ロシア)
今や「タノと言えばこの人」と言っても過言ではない選手。
ジュニア時代から片手を上げて跳ぶジャンプで高い加点を出し、近年は両手をまっすぐに上げる「タケノコタノ」も使うように。
元々どの要素でも高い点を取ることができるオールラウンダーな彼女ですが、腕がまっすぐに上がった美しいタノはとりわけ大きな加点源となっており、まさに「タノの名手」といえるでしょう。
アリーナ・ザギトワ(ロシア)
メドベデワの同門の後輩であるこの人も、やはりタノジャンプの使い手。
ただでさえ跳ぶのが難しい3ルッツー3ループを手を上げて跳ぶのは驚異的です。
また、3連のコンビネーションジャンプでは上げる手を両手ー片手ー両手と自在に使い分けており、ここでも高いジャンプの技術を見せつけています。
マリア・ソツコワ(ロシア)
上記2人と同じエテリコーチ陣営ではないこの人も、今季からタノジャンプを導入するように。
ただ、両手を使ってはいるものの一風変わったスタイルのタノはファンの間でも賛否両論。
腕がまっすぐ上がっていないということから「やめたほうがいいのでは」との声も...。
アレクサンドラ・トゥルソワ(ロシア)
ジュニア女子の中でトップの成績を誇る彼女もタノジャンプの使い手。
難しいルッツやフリップにセカンドループもつけられる多様なコンビネーションジャンプを両手を上げて跳ぶのだから驚きです。
ジャンプの入りにも工夫が見られ、ジュニアとは思えないほどの大きな加点を叩き出すジャンプは圧巻。
まさに将来が末恐ろしい存在です。
まとめ
ファンの間でも賛否両論あるタノジャンプですが、実は非常に技術のいる、難しいジャンプであることがわかりました。
反対派の方も、ちょっと見る目が変わったのではないでしょうか?
フィギュアスケートの表現方法は多種多様。
そのため、タノジャンプを多用することに対してこのような議論が巻き起こるのも必然的なのではないかと思います。
あなたはこのタノジャンプ、どう見ますか?
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