僕は自動車業界の中で、とある大手メーカーで研究開発エンジニアとして働いており、自動運転に関する様々な情報も入ってきています。
そんな僕から見て、2022年現在、自動運転技術やサービスで、一番進んでる企業はどこか?今自動運転でどんなサービスが提供されているのか?についてまとめてみたいと思います。
市販車レベルの話をすれば世界初はホンダだった!
市販車レベルでの話をすれば、世界初の自動運転レベル3搭載車はホンダ『レジェンド』でした。これは2020年11月に発売されました。自動運転のレベル分けで、レベル2とレベル3には大きな違いがあったので当時大きな話題となりました。
簡単に自動運転のレベルをおさらいすると、
レベル2 | 正確には自動運転的な事は出来るかもしれませんが、運転支援止まりです。どんな状況であれ、人が運転する必要があるというものです。 |
レベル3 | 一部の限られた状況ではありますが、人ではなく、システムが運転できるというものになります。自動運転中であれば、スマホを見たりする事も可能です。ただし、システムが対応できないような状況になった場合は、すぐに人が運転を引き継がないといけません。日本国内では、2020年4月の法改正のよって、レベル3搭載のクルマを市販できるようになりました。 |
レベル4 | レベル3と同じように、限られた条件の中で、システムが運転できるというもの。ただし、システムだけで完全に対応でき、人の介入は必要ないものとなります。 |
という感じです。
システムが自動運転中であれば、ドライバーはスマホ見たりしても良いとか、そんな法改正がいつの間にかなされているんですよね。でも、もちろんそれは、レベル3相当の認可を受けた自動車のみ適用ですからね!
でも、実はそれよりも3年も前の2017年、アウディ『A8』が、すでにレベル3相当を備える機能を持っていました。しかし、当時レベル3相当の自動運転での走行は、法律上許可されていなかったため、技術的には可能でも、レベル3搭載車としての認可が得られなかったというアウディにとっては悲しい過去があります。
ドイツ、日本の各自動車メーカーが自動運転レベル3相当の市販車を発表したという事で、これらのメーカーが自動運転技術でトップを走っているのでは?と思う方もいるでしょう。
ですが、今現在、自動運転で一番進んでいる企業はどこかというと、僕は
Waymo(ウェイモ)
だと思います。
Waymo(ウェイモ)について
ウェイモは、アメリカのグーグル系の自動運転開発企業です。早くから自動運転開発に本格着手しており、2018年12月から、自動運転レベル4相当の車両を使い、有料でのタクシーサービスを開始しています。
以下は、実際にウェイモの無人タクシーを利用した時のつい最近(2022年8月)の動画です。一般利用者として利用した時の動画だからこそ自動運転のリアリティが感じられると思います。
この商用サービスは、アメリカ全土で行われているという訳ではなく、認可がとれた一部地域のみで行われているサービスです。アメリカでは、ウェイモ以外にも、GMの自動運転部門のクルーズが同様の自動運転タクシーサービスを始めています。
また、中国でも、同様に、百度(Baidu)も自動運転タクシーの有料サービスを開始しています。これだけではなく、世界では自動運転が一般利用者に提供されている地域が結構あります。つまり、一般利用客に提供できるほどの信頼性があるからこそ、このような事ができるのです。
無人でそこそこ問題なく目的地まで到達できるような自動運転システムを開発した企業は、実は結構あります。
でも、『そこそこ問題なく』じゃだめなのです。やはり、絶対大丈夫だと思えるくらいのものがないとこのようなサービスは始められないと思います。
ウェイモは、このような絶大な信頼性をどうやって獲得していったのでしょうか?
ウェイモのこれまでの実績は?
ウェイモは、グーグルの自動運転車開発部門が分社化して誕生した企業です。かなり優秀なエンジニア陣で研究開発がなされているのは言うまでもありません。
そして、2020年の時点でウェイモは合計約1000万キロの試験走行を重ねていました。地球を250周分ですよ。で、あるレポートが発表されています。
そのレポートでは、この1000万キロの走行中、18件、対クルマとの衝突事故が発生したそうです。エアバッグが開くような重大事故はわずか3件で、さらに、発生した事故の責任のほとんどは、他のクルマの運転手にあったとのこと。つまり1000万キロのうち、もらい事故も含めて18件、重大事故が3件。
一般道を1000万キロも走っていれば、人間でも事故は起きるものです。僕自身はこれまでに、約15万キロの運転経験があり、全部小さいものでしたが、3件のもらい事故があります。
それを考えると、かなり信頼性が高いのだという事もうなづけるのではないでしょうか?少なくとも、平均的な人間のドライバーよりもウェイモの自動運転車が安全であるという事の証明にはなるのではないでしょうか?
※ちなみに最近のデータですと、ウェイモの試験走行は、2021年だけで374万キロ実施したそうです。それがさらなる改善のためにフィードバックされています。他の企業と比べて圧倒的に試験走行距離が多く、今後もウェイモが優位な位置に立ち続ける事が予想されます。ちなみにトヨタは2.2万キロでした。(注意:カリフォルニア州のみでの走行距離です)
自動運転関連企業をランキング形式で見てみると
Navigant Research(ナビガント・リサーチ)というアメリカの調査会社が、2020年に自動運転開発会社を対象にしたランキングを発表しました。これは、自動運転製品の機能、信頼性、マーケティング、市場戦略等10項目にわたる評価を行いランク付けしたものです。そのランキングをここで紹介します。
1位 | Waymo |
2位 | Ford Autonomous Vehicles |
3位 | GM Cruise |
4位 | Baidu |
5位 | Intel-Mobileye |
6位 | Apriv-Hyundai |
7位 | Volkswagen Group |
8位 | Yandex |
9位 | Zoox |
10位 | Daimler-Bosch |
1位はやはり、Waymo(ウェイモ)ですね。しかもこれは2020年のデータ。先程も言いましたが、2021年に圧倒的な試験走行距離だったこともあり、このWaymoが2022年現在も1位のままでしょうし、当面の間は1位の座を守る事と思います。
また、2022年現時点での勢力図もさほど変わりない状況と思われますが、新たなデータを入手しだい更新する予定です。
残念ながらこの中に、日本企業は一社も見当たりませんでした。トヨタ、ホンダ、日産の巻き返しに期待したいと思います。