フィギュアスケート平昌オリンピック代表選考会を兼ねた2017年12月開催の全日本選手権。羽生結弦選手がケガで欠場の中、大方の予想通り男子シングルは宇野昌磨選手が2年連続の金メダルを獲得し、平昌オリンピック出場が決まりました。
アスリートにとって4年に一度のオリンピックは夢の舞台。羽生選手を脅かす存在にまで成長し、今シーズン安定的に成績を残している宇野選手。果たして宇野選手が金メダルを取れる可能性はあるのか?
平昌オリンピック開催まで残すところ1ヵ月。日本男子シングルの金メダル争いについて考えてみようと思います。
(ライター:marilyn)
宇野選手と羽生選手のプロフィール
宇野選手について
宇野選手は愛知県名古屋市出身、1997年12月17日生まれの20歳です。
トヨタ自動車に所属し、トリプルアクセルを武器として戦った伊藤みどりや浅田真央を育て上げた世界的な名コーチである山田満知子、そして振付師としても活躍中の樋口美穂子と鉄壁のコーチ陣から指導を受けています。
身長159cmと男性としては小柄ながら、難しい技を日々習得し、演技力においても年を追うごとに力をつけています。
羽生選手について
一方、羽生選手は宮城県仙台市出身、1994年12月7日生まれの23歳です。
全日本空輸(ANA)に籍を置き、練習はトロントにあるクリケット・クラブを拠点としています。コーチは言わずと知れたブライアン・オーサー。
あのキム・ヨナをバンクーバー五輪で、そしてソチ五輪で羽生選手を金メダルに導いた巨匠です。
宇野選手と羽生選手は同じ12月生まれの3歳違い。出身地や練習拠点から見ても東西の横綱ともいうべき対照的な二人ですね。
宇野選手と羽生選手 これまでの戦績
宇野選手が羽生選手を下して平昌オリンピックで金メダルを獲得できる可能性はあるのか?宇野選手が羽生選手と直接対決をした試合での成績を見てみましょう。
大会名 | 開催地 | 宇野昌磨 | 羽生結弦 |
---|---|---|---|
世界選手権 2016 | ボストン | 7位 | 銀 |
世界選手権 2017 | ヘルシンキ | 銀 | 金 |
四大陸選手権 2017 | 江陵 | 銅 | 銀 |
グランプリファイナル 2015 | バルセロナ | 銅 | 金 |
グランプリファイナル 2016 | マルセイユ | 銅 | 金 |
グランプリファイナル 2017 | 名古屋 | 銀 | 欠場 |
オリンピック 2014 | ソチ | - | 金 |
オリンピック 2018 | 平昌 | ? | ? |
宇野選手がシニアに参戦してから、羽生選手との直接対決では一度も勝っておらず、過去の成績だけで見ると宇野選手が平昌オリンピックで羽生選手を下して金メダルを獲得することは難しく見えます。
果たして宇野選手が羽生選手に勝てる要素はあるのでしょうか。
新・4回転時代!難易度の高いジャンプへの取り組みは?
今や男子シングルは4回転ジャンプをプログラムに組み込むことは当たり前の時代となりました。4回転ジャンプを抜きにしてはメダルを獲得することは厳しいと言えるほどです。
2016年四大陸フィギュアスケート選手権において、国際スケート連盟(ISU)公式戦で初めてフリーで4度の4回転ジャンプを成功させた中国の金博洋(ボーヤン・ジン)選手、
2017年四大陸フィギュアスケート選手権のフリーにおいて、ISU公式戦で史上初となる5回の4回転ジャンプに成功して優勝したアメリカのネイサン・チェン選手など、
単に4回転ジャンプを跳ぶことだけでは金メダル獲得には遠く、コンビネーションジャンプを含む複数の種類の4回転ジャンプを跳ぶことが必要な時代に突入しています。
それでは、宇野選手と羽生選手がそれぞれどのような種類の4回転ジャンプを跳べるのか見てみたいと思います。
宇野選手と羽生選手が公式戦で跳んだ4回転ジャンプの種類
(難易度の高い順に記載)
宇野昌磨 | 羽生結弦 | |
---|---|---|
ルッツ | ● | |
フリップ | ● | |
ループ | ● | ● |
サルコウ | ● | ● |
トウループ | ● | ● |
宇野選手、羽生選手とも4種類の4回転ジャンプを着氷させており、勝敗は五分五分。
難易度の差も大きくありません。
美しさ・高さ・飛距離を備えた、質の高さで加点をもらえるような4回転ジャンプを跳ぶことはもちろん、コンビネーションジャンプで完成度高く跳べるか否かが勝敗の分かれ道となりそうですね。
トゥーランドットvs陰陽師!宇野選手と羽生選手のプログラム構成は?
絶対王者・羽生選手の背中を追いかけ着実に実力をつけてきた宇野選手。平昌オリンピックのフリーでは2シーズンぶり2度目となる『トゥーランドット』を演じます。
一方の羽生選手がフリーとして選んだ『陰陽師』も2シーズンぶり2度目の楽曲。
それぞれが、自分の演目として自信のある楽曲で挑む平昌オリンピック。
宇野選手と羽生選手のプログラム構成を、フリーの技術点の基礎点から比較してみましょう。
宇野選手と羽生選手 平昌オリンピックでのフリー プログラム構成(予想)
(2016年6月改定の採点基準(国際スケート連盟コミュニケーション第2000号)による)
要素 | 宇野昌磨 『トゥーランドット』 |
要素 | 羽生結弦 『陰陽師』 |
---|---|---|---|
4回転ループ | 4回転ルッツ | ||
トリプルアクセル | 4回転ループ | ||
トリプルループ | トリプルフリップ | ||
フライング キャメルスピン (レベル4) |
フライング足換え コンビスピン (レベル4) |
||
フライング足換え コンビスピン (レベル4) |
ステップシークエンス | ||
ステップシークエンス | 4回転サルコウ+ トリプルトウループ |
||
4回転フリップ | 4回転トウループ+ シングルループ+ トリプルサルコウ |
||
4回転トウループ | 4回転トウループ | ||
ダブルアクセル+ 4回転トウループ |
トリプルアクセル+ ダブルトウループ |
||
トリプルアクセル+ シングルループ+ トリプルフリップ |
トリプルアクセル | ||
トリプルサルコウ+ トリプルトウループ |
フライング足替え シットスピン (レベル4) |
||
コレオグラフィック シークエンス |
コレオグラフィック シークエンス |
||
足換えコンビスピン (レベル4) |
足換えコンビスピン (レベル4) |
||
合計 | 100.9 | 105.4 |
技術点の基礎点で比較すると、宇野選手は羽生選手に4.5点及びません。
ずばり、宇野選手は金メダルを取れるのか?
過去の成績やプログラムの構成で見ると宇野選手より羽生選手が勝っているのは紛れもない事実。
しかし、データの通りに行かないのがフィギュアスケートの面白いところ。
技術点の正式な採点には基礎点に加え、出来映えを-3から+3で表す評価点(GOE)がつくので、それぞれのジャンプやスピンの基礎点に加点を積み上げることが充分に可能です。
宇野選手が羽生選手に勝つためには、いずれのジャンプも失敗なくしかも完璧な出来映えで跳び、GOEでプラスを稼ぐこと、更にスピンやステップで取りこぼすことなくレベル4を確実に取ることが絶対に必要です。
しかも、フィギュアスケートは技術点と演技構成点で合計得点が決まるため、演技構成点においてもレベルを確実に取って合計得点を稼ぐ必要があります。
演技構成点の要素は次の5つに分類されます。
・要素のつなぎ
・動作/身のこなし
・振り付け/構成
・曲の解釈
ショートプログラム、フリースケーティングともに目が離せない熾烈な戦いとなりそうです!
フィギュアスケートは芸術性を求められるスポーツでもあり、メンタル面が大切になる繊細なスポーツ。
今シーズンの羽生選手は2017年9月に開催されたオータムクラシックのショートプログラムで最高得点を出し、幸先の良いスタートかと思われましたがグランプリシリーズ初戦のロシア大会では惜しくも銀メダルとなりました。
さらに悲運なことに、第2戦となるNHK杯では前日の練習で右足関節外側靱帯を損傷し、NHK杯を欠場したためグランプリファイル5連覇はならず、全日本選手権も欠場したことから平昌オリンピックへはまさにぶっつけ本番の一発勝負。
メンタルにどう影響するかが心配なところです。
一方、宇野選手は全日本選手権でダブルアクセル+4回転トウループという、公式戦では誰も成功していない、セカンドジャンプに4回転をつけるという大技に挑みました。
練習では既に成功させており、この大技が跳べるのはロシアの皇帝・プルシェンコと宇野選手の2人だけ。
新しいことにどんどんチャレンジしている宇野選手。
1月下旬には四大陸選手権への出場も控えており、公式戦を積むことで平昌オリンピックまでには最高のコンディションを維持することが出来そうです。
「いつの日からか、平昌オリンピックでの金メダルは夢ではなく目標に変わった」
羽生選手に対しても、以前ならば「手の届かない雲の上の存在」
と話していた宇野選手ですが、今シーズンでは「負けたくない」とはっきり口にしています。
実績を積み上げ、精神的にも強さを増した宇野選手。
もしかして金メダルを取れるのでは?との期待が高まります。
いずれにしても、平昌オリンピックでは熱戦を制して、宇野選手と羽生選手の二人で表彰台1位、2位を独占し、2枚の日の丸が掲揚されるのを見たいですよね!
がんばれ~!
【関連記事】
⇒宇野昌磨選手 進化したトゥーランドットで平昌オリンピック金メダルへ!
⇒宇野昌磨選手はどんな人?趣味や性格をまとめてみました
⇒天然?天才?宇野昌磨選手の名言・迷言集!
⇒全日本選手権でいきなりオリンピック内定!坂本花織選手の魅力とは?
⇒平昌オリンピック、ザギトワ選手のライバルとなる選手たちは?
⇒マリア・ソツコワ平昌オリンピック出場へ!ジャンプや演技の特徴は?
⇒カロリーナ・コストナー復帰!オリンピックで優雅な舞を!