フォルクスワーゲン(以下VW)の排ガス不正問題を受けて、ディーゼルに将来はない!
というような論調の記事やコメントが多いような気がします。
果たして本当にそうなのでしょうか?
上記の問いに対して、私なりにやさしい言葉で、わかりやすくまとめてみたいと思います。
各国の排ガス規制についてのまとめ
まずは、各国の排ガス規制値を簡単にまとめてみたのでご覧ください。排出ガス規制 | NOx(g/km) | PM(g/km) |
---|---|---|
日本(2009年) | 0.080 | 0.005 |
欧州ユーロ5(2008年) | 0.180 | 0.005 |
欧州ユーロ6(2014年) | 0.080 | 0.005 |
米国Tier2 Bin5(2007年) | 0.044 | 0.006 |
PM:発がん性物質である粒子状物質
これを見ると、2008年から適用されたユーロ5のNOxの規制値が一番規制がゆるいことがわかりますね。
このゆるい規制で、欧州ではディーゼルエンジン比率50%以上という状態になっています。
日本、北米と比較して、だいぶゆるい値でディーゼルの販売台数を伸ばしてきたので、何か政治的な操作が加わっているのではなかろうかと想像してしまいますね。
ただ、2015年1月1日から欧州で販売される新車は、すべてユーロ6の基準をクリアしなくてはならなくなりました。
これで、日本と欧州の基準は同レベルになりました。
最近になって、欧州車がこぞって、ディーゼルエンジン車を日本に投入してきたのは、日本と同じ規制値である、ユーロ6が欧州で施工されたため、そのまま普通に輸入できるようになったからでしょう。
その前のユーロ5の規制値は、日本の規制値を超えていたので、そのまま車を日本に持ち込む事は不可でしたからね。
本当に排ガス規制値を守れているのか?本当にクリーンなのか?
クリーンディーゼルエンジンは、日本、米国、ユーロ6の規制値をクリアできているのであれば、ガソリン車並みにクリーンであるという事はいえると思います。基本的には、上記でまとめた排ガスの規制値をクリアしないことには、自動車の販売はできませんので、クリーンディーゼルはクリーンであると言えるはずです。
さて、ここでNOxの規制値の意味を考えてみたいと思います。
日本とユーロ6のNOxの規制値は0.080(g/km)です。
この意味は『1km走行する事で発生するNOxの排出量を0.08gに抑えなければいけない』という事です。
そうなると、私が最初に思った素朴な疑問は、
もしアクセルペダルをベタ踏みにしてずーっとエンジン全開で走ったら、1kmで0.08gなんて簡単に超えちゃうんじゃないの?
ということです。
つまり、排ガス規制テストの内容としては、一般の人が長期間に渡って通常走行した際の排出量の平均値が割り出せるような試験項目を実施する必要があると私は考えます。そしてその平均値が基準値未満に収まっているかどうかを検査しているのではと推測しています。(排ガス規制テストの詳細まではわからないので、私の個人的なイメージで申し訳ありませんが...)
通常走行といっても、時には急加速もするでしょうし。高速で一定速度で走ることもあるでしょうし...。
NOx、PMが多量に排出される条件、ほとんど排出されない条件等、様々なシチュエーションを考慮して、多くの試験項目が作成され、それを実施しているのではないでしょうか?
そういう訳で、外部の者が「基準値を超えた!」と警告しても、その基準値越えのテストが、基準値を超えるべくして超えるような厳しいテストばかり行って出した結論だとすれば、意味はないと思います。
事実、DUH(ドイツ環境支援協会)という団体がメルセデスベンツのディーゼルエンジン車の排出ガスを計測。
その結果、排出ガス中のNOx(窒素酸化物)が、基準を大きく超えていたとして「ダイムラーが排出ガスのデータを不正に操作した」と発表しています。
また、米環境団体ICCTが、BMWのディーゼルエンジン車の排ガスから基準値の11倍を超えるNOxが検出された
とも発表しています。
BMWも、メルセデスベンツも、即座に「不正行為が無い事をきっぱりと明言」。「テスト方法を開示せよ」と反論までしています。
こういう状況ですので、基準値を超えたかどうかの判断は非常に難しいのかなと思います。
よって、現状では、上記のような基準値を上回っているよ!というような声がどこかからあがったとしても、
「排ガス規制テストをクリアした」という事実を拠り所にして
『クリーンディーゼルはクリーンである!』というしかないですね。
しかし、いまいち腑に落ちないので、排ガス規制テストの試験内容の妥当性を検査機関に検証して頂きたいですね。合わせて、この「本当にクリーンなの?」という点に関しては、是非、自動車メーカーが
「これこれこういう理由だから、クリーンであると言い切れます」と説明してほしいものです。
クリーンディーゼルの今後はどうなる?
今回のVW排ガス不正問題を受けて、「クリーンディーゼルはクリーンじゃないんだ!」とか、「ディーゼルに将来はない!」といった記事やコメントを多く見かけるようになりました。確かに、不正を犯したVWの車種はクリーンではないです!
だからといって、すべてのクリーンディーゼル車が不正をしているわけじゃないです!!
VW以外の自動車メーカーで熱心に開発を進め、排ガス基準値をクリアし、実走行でも問題なく基準値未満の排ガスで走行できる車種もたくさんあるはずです。
例えば、日本でクリーンディーゼルの圧倒的なシェアを誇るマツダの例ですが、マツダは北米ではクリーンディーゼル車を現時点で販売しておりません。
その理由は、
『世界で一番厳しい北米の排ガス基準はクリアできるが、その分、エンジンの性能を低下させざるを得ず、マツダ車らしい楽しい運転を損なわせるから』
とのことで、いずれは、エンジンの性能低下を抑えて、北米排ガス基準をクリアできる見込みが立ったら販売するとのこと。
こういう事を言っているので、マツダは不正をしているとは思えませんね。
また、クリーンディーゼル車の重要部品である『コモンレール』システムを開発して、世界のクリーンディーゼル界を牽引している、ドイツ・ボッシュ社もWebサイト内で下記のように述べています。
ボッシュでは、ディーゼルエンジンのCO2排出量をさらに、おおよそ10%低減できる余地があると確信しています。
NOx排出削減の面でも、ディーゼル車には大きな可能性が残されています。たとえばボッシュの「DENOXTRONIC」を使えば、排出量を最大95%低減することができます。これは、今日の公式走行サイクル以外においても大幅に低減できます。
今の技術でも、ある程度クリーンなディーゼルエンジンを作ることは可能なのでしょう。
但し、上記のマツダのコメントにあるように、クリーンにすることによって、エンジン性能の低下(出力ダウンや燃費悪化等)を招いてしまい、クリーン化とエンジン性能のバランスがうまくいかない状態なのだと思われます。
私は、今回の騒動がきっかけで、よりクリーン化の技術が進んでいくように思います!!
それよりも問題なのは、世間のディーゼルエンジンに対するイメージだと思います。
今回の騒動で、ディーゼルエンジンのイメージは悲しいかな、地に落ちてしまいました。
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに比べて、
・燃料費(軽油)が安い
・燃費が良い
・加速性能が良い
というメリットがあります。
クリーンであれば、本当にガソリン以上の存在になれる可能性を秘めているように思います。
VW、ベンツ、マツダといった自動車メーカー、ボッシュといった自動車部品メーカーが先頭に立ち、
『クリーンディーゼルエンジンが本当にクリーンであること』を丁寧に説明していき、世界中の人々のディーゼルに対するイメージが回復すれば、クリーンディーゼルにはまだまだ未来があると個人的にはおもいます!!
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